ITAMとITSMの違いとは?
IT資産管理(ITAM)とITサービス管理(ITSM)は、事業目標を支援するためにITの機能を必要とする企業にとって極めて重要なテクノロジーです。いずれのテクノロジーも、IT関連の業務支援を企業に提供するものですが、その目標と目的はそれぞれ大きく異なります。ITAMとITSMの相違点についてみていきましょう。
ITAM – IT資産管理
IT資産とは、企業の事業目標を支援するため企業によって使用されるハードウェアとソフトウェアの両方を指します。企業にIT資産のインベントリ(目録)に関する正確なレポートが存在していれば、企業は十分に情報を把握した上で、IT資産の購入の要否を判断できます。ところが、IT資産は頻繁に更新され、移動され、買い替えられるため、資産に関する情報を常に最新の状態に維持することは難しいのが現状です。
IT資産に関するレポートに誤りがある場合、企業が不必要なIT資産を購入してしまうことや、ソフトウェア監査の対象になることに加え、セキュリティ違反が生じることがあります。ITAMは、企業の目標を支援するIT資産を管理するための推奨事項とベストプラクティスを提供するものです。
ITAMのベストプラクティスでは、自社のIT資産に関連するすべてのコストを企業が追跡できるようにするため、IT資産を関連する契約情報および財務情報と関連付けることが推奨されています。
さらにITAMは、コストを削減しつつ、管理を強化し、事業目標の遵守を保証し、リスクを軽減する目的で、基準、プロセス、方針、評価方法を策定するためのガイダンスをIT資産管理者に提供します。
ITAMのプラクティスを導入すれば、「IT資産のライフサイクル管理」、すなわちITを購入から廃棄まで追跡することが可能となります。例えば、ITAMのハードウェア廃棄プロセスでは、入れ替えの際に古いノートパソコンが廃棄され、関連するソフトウェアライセンスが再展開できるように適切に回収されることが保証されます。
ガートナー社は、テクノロジー戦略、アーキテクチャ、資金援助、契約や調達に関する判断の事業上の価値を最大限に引き上げるため、IT資産管理(ITAM)はテクノロジー資産のライフサイクルコストとリスクについて正確な説明を提供するという見解を示しています。
効率的なIT資産のライフサイクル管理を確実に実施するため、ITAMのビジネスプラクティスには、IT資産のリクエスト、承認、調達、廃棄、最展開についてのプロセスが含まれています。これらのプロセスに従えば、IT資産を購入し、その資産の展開や再展開を適切に追跡管理する際、IT資産を確実に文書化できるようになります。
ITサービス管理(ITSM)ソリューションのほとんどにITのリクエストと承認をサポートする機能が装備されています。このため、既存のITSMソリューションに企業が選択したITAMソリューションを統合することが重要となります。
また、ソフトウェアベンダーによって提供される総合的なITAMソリューションのほとんどが、企業のさまざまな部門を網羅するプロセスを提供していることから、ほとんどのIT資産管理ソリューションがIT管理者ではなく、企業の経営陣によって選択、所有されているという状況についても把握しておくことが重要となります。
ITSM – ITサービス管理
事業目標を支援するためにIT資産を必要とする企業は、資産が正常に機能し、購入理由となった目的を果たしていることを確認するためのITサービスも必要としています。ITサービス管理(ITSM)は、ソフトウェアツールのみを対象としたものではなく、プロセス、人材、テクノロジーを対象とするものです。ITSMソフトウェアは、ITSMソリューションの一部となります。
ITサービス管理は、企業内で情報技術(IT)が使用される方法を構築、提供、管理、改善するための戦略的なアプローチです。ITサービス管理の目標は、企業が自社の事業目標を満たすことができるよう、適切なプロセス、人材、テクノロジーが適切に配置されていることを保証することです。
ITSMソフトウェアソリューションには、データベースや事業項目(ユーザー、グループ、役割など)、プロセスエンジンなどいくつかのコンポーネントが装備されています。現在ベンダーが提供しているITSMソリューションのほぼすべてが、ITILのベストプラクティスに従っています。
ITIL
1980年代、ITソリューションの導入の増加に伴い、ITサービス管理の基準を設けることが求められていました。ITILは、一般的な用語を定義すること、そして、ITサービス管理のベストプラクティスを定義すること、この2つの目的を果たしています。「インシデント」、「問題」、「変更」、「構成アイテム(CI)」、「構成管理データベース(CMDB)」などの用語はすべて、ITILの教科書に記載されています。
ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、ITサービス管理(ITSM)ソリューションを構築するためのガイダンスおよびフレームワークを提供するために作成されたドキュメント(書籍)群です。ITインフラストラクチャをサポートする企業は、ITILの推奨プロセスに従うことによりサービス管理コストを削減しつつ、効率を向上できます。
ITサービスに携わる社員が必要な知識を習得し、常に最新の知識を把握できるよう支援するため、いくつかのITIL認定資格やトレーニングが提供されています。ITIL認定資格は、製品ではなく、プラクティスや手順に関する知識を対象とするものです。
ITSMソフトウェアソリューションは、一般的にITILの推奨事項すべて(すべてではない場合はそのほとんど)を満たすように設計されています。
PINKなど、ITSMソフトウェアソリューションがITILに準拠していることを認定するためソリューションを評価する団体が存在することについても把握しておく必要があります。ITILのベストプラクティスを導入することを予定している場合には、必ずITIL準拠の認定を受けているITSMツールを選択してください。
CMDBかITAMか
総合的なITSMソリューションは、企業にサービスを提供するIT資産をサポート、管理するため、構成管理データベース(CMDB)と共に構成管理機能を提供します。ITAMとITILはいずれも、IT資産を管理するためのガイダンスを提供しますが、各プラクティスの目的を理解していないとこれらのガイダンスは混乱を招く場合があります。
- ITAMの目的は、所有権、資産のライフサイクルに関連する契約、保証、最新情報などIT資産の総合的なコストの管理に的を絞ることです。ITAMは、企業の財政面からIT資産に目を向けるものです。
- 構成管理の目的は、業務やサポート面からIT資産に目を向けることです。資産の可用性と安定性は、企業の日常業務に影響するため、資産は文書化する必要があり、文書化する際には、資産の構成と資産が提供するサービスを含める必要があります。
ITAMにCMDBを使用できるか
この質問の答えを明らかにするために、航空会社によるフライトの管理方法をみていきましょう。
航空会社は、フライト番号を用いて、データベースでフライトを管理しています。ここでフライト番号はサービスを示す番号となります。機体と機体の整備・保守に関する情報を示すインベントリ(目録)情報は、別の資産データベースで管理されています。
機体に問題がある場合、航空会社は代わりに別の機体を使用することがあります。サービス(フライト)と装置(機体)が別々のデータベースで管理されているため、航空会社はフライト番号を変更せずに機体のみを変更できます。
ITAMと構成管理の両方にCMDBを使用することは、航空会社が機体のインベントリ(目録)を管理するデータベースでフライト番号も管理する場合と同じくらい実用的ではありません。
ほとんどのIT資産が3~4年ごとに入れ替えられる一方、補助資産を用いたITの構成は入れ替えられず、維持、更新されるため、サービスのライフサイクルの維持と管理にCMDBを使用し、IT資産管理データベースから補助資産を引き出す必要があります。
まとめ
IT資産管理(ITAM)とITサービス管理(ITSM)は、事業目標を支援するためにIT資産を使用する企業にとって極めて重要なテクノロジーです。IT資産管理ソリューションやITサービス管理ソリューションの構築、拡張、または変更を検討されている場合は、両方のソリューションの統合機能について必ずご確認ください。
適切なツールを使用すれば、アナリストが手動で実施するタスクから生じるコストやミスを軽減しつつ、IT資産をサポートするITプロセスを自動化し、効率を向上し、管理を強化できます。