従来別々に扱われていた領域

ITサービス管理(ITSM)とIT資産管理(ITAM)はこれまで別々の領域として扱われてきました。

ITSMは企業に不可欠なサービスとサポートがタイムリーに提供されることを保証するもので、ITAMはこれらのサービス向けのハードウェアおよびソフトウェア資産を検出、追跡し、資産のライフサイクル全体を通して、総合的な価値、コスト、コンプライアンスを最適化するものです。

この2領域は通常、別々に導入され、それぞれに対して事業目標が設定されているのが一般的ですが、ITSMとITAMのプロセスとデータは相互に深く関連しています。

IT部門が業務面でサイロ化された組織である場合、IT環境全体の情報を入手し、手動プロセスを自動化することが企業にとって実質的な課題となります。チーム、ツール、目標が異なっているという状況により、情報やデータの共有が制限されてしまうため、結果的にITSMとITAMはそれぞれ独立した領域となってしまうのです。

ところが、ITSMとITAMを密に連携させ統合できれば真逆の結果がもたらされます―多くの操作やプロセスを自動化、効率化でき、速やかな対応が可能となるため、「見落とされる」問題が少なくなるのです。

IT部門はさらに多くの情報を得られるようになり、これまでよりもコストをかけずに、サービスの水準と効率を引き上げる主体的な行動を取る体制を整えることができます。

*回転イス式管理=回転イスのようにクルクルと空回りする管理方式

ITSMとITAMのプロセスを統合するメリット:5つの事例

今回のブログと続編となる次のブログ投稿記事では、ITSMとITAMのプロセス、データ、情報の統合が、IT部門にとってコンプライアンスとコストを最適化しつつ、業務効率を最大限に引き上げ、サービスの提供を改善することを目的とした総合的なプランの一部となる可能性を示唆する5つの事例をご紹介いたします。

このブログでは最初の2つの事例、1) 「セルフサービスでユーザーに権限を与える」、2) 「より的確かつ速やかなインシデント解決」をご紹介します。

後遍となる記事では、残りの3つの事例、3) 「主体的な管理で問題のある資産に対応する」、4) 「効果的な変更管理」、5) 「ライフサイクル全体で常に情報を把握」をご紹介します。

1. セルフサービスでユーザーに権限を与える

ITサービスデスクが利用できるアプリケーションや利用状況を把握できていないことはよくあります。この状況は、セルフサービスのリクエストに対してタイムリーな対応をするための取り組みを妨げる足かせになっています。

また、この状況が原因で企業は余分なソフトウェアを追加購入し、結果的に不必要な支出やコンプライアンスの問題を招いています。

ITSMとITAMプロセスを統合すれば、企業は使われていないソフトウェアを再取得、すなわち回収することで、コストを削減し、既存の資産のパフォーマンスを最適化できます。

例えば、Microsoft Visioを必要としているサラさんという営業担当者がいるとします。

サラさんはアプリケーションを持っていませんが、ソフトウェアを購入し、インストールするために数日間を無駄にしている余裕もありません。

  1. サラさんはVisioを起動しようとしましたが、アクセスが拒否されました。
  2. 通常であれば、このような場合はサービスデスクに電話で問い合わせ、ソフトウェアのインストールをリクエストします。
  3. そしてリクエストを受けたサポートデスクのアナリストが購買部にタスクを送信し、購買部が新しいソフトウェアライセンス購入の申請を行い、申請が承認されると購入手続きを開始します。
  4. IT部門はサラさんに確認メールを送信し、
  5. IT部門の技術者が手動でデバイスとユーザーを検索し、Microsoft Visioのインストールを開始します。ところがこの時点で、サラさんがリクエストしてから数日が経過していることでしょう。

では、ITSMとITAMが連携して機能して、ユーザーのためにセルフサービス経由でソフトウェアのリクエストにかかる時間を加速できると仮定して考えてみましょう。

  1. この場合、サラさんがMicrosoft Visioのリクエストを送信すると、システムによって、未使用のステータスのすぐに使えるVisioのライセンスが確認、特定されます。
  2. Visioのアプリケーションがサラさんに割り当てられ、サラさんに付与されている権限に従って、エンドポイント管理プロセス経由で自動的にインストールが行われます。
  3. プロセスはサービス管理ソリューションによって記録、追跡され、サラさんには通知が送信されます。そしてサラさんへの通知をもって、ソフトウェアリクエストのステータスが完了済みとなります。

このようにプロセス全体がわずか数分で完了するため、数日間待つ必要がなくなります。

ユーザーに自分で問題を解決する機能を提供できるため、サービスデスクはこういった業務に時間を取られることがなくなり、他の戦略的なプロジェクトに集中して取り組めるようになります。

2. より的確かつ速やかなインシデント解決

サービスデスクがより速やかかつ効率的にインシデントを解決できれば、企業の生産性と社員の満足度を維持できるでしょう。マイケルさんのケースを見ていきましょう。

マイケルさんは、会社支給のノートパソコンが充電できずシャットダウンもできないため、サービスデスクに問い合わせました。

  1. この状況において問い合わせを受けたサービスデスクのアナリストが、社内のノートパソコンの資産すべての記録をすぐに確認できれば、問題のノートパソコンが数ヶ月前に購入されたばかりの資産でまだ保証の対象であるとすぐに特定できます。
  2. そしてこの情報を踏まえた上で、アナリストはノートパソコンを修理するために社員の工数を使うのではなく、保証を利用してノートパソコンを交換することが得策だと判断できるでしょう。
  3. また、マイケルさんの仕事を中断させないために、利用できる代替機や交換できるノートパソコンがないか、資産レポジトリを確認するという手段を取ることもできます。
  4. 故障したノートパソコンが修理から戻ると他の社員が使えるように、関連付けられているソフトウェアライセンスが回収されます。

このノートパソコンにまつわる単純な事例には、サービス品質を犠牲にすることなく、問題解決にかかる時間を短縮し、社員の満足度を向上し、サポートコストを削減するため、企業が資産に関する情報からメリットを得られる可能性が示されています。

ハードウェアとソフトウェアに関して把握できる情報が多ければ、アナリストはパフォーマンスの低下やアプリケーションのクラッシュなど頻発する種類の異なるインシデントについて、メモリ不足やソフトウェアバージョンの競合など考えられる原因を速やかに特定できます。

また、すべての手順と操作を記録しておけば、後で分析する際や、監査で求められた場合に役立ちます。

他の事例についてはブログの続編の投稿記事をご確認ください

後編では、ITSMとITAMを統合することがどのようなメリットにつながるかを示す3つの事例をご確認いただけます。