映画『96時間』の中で、リーアム・ニーソンが演じたブライアン・ミルズには娘を誘拐した犯人を見つけ出すために使える「特別な能力/スキル」を持っていました。ブライアン・ミルズのずば抜けた賢さは、置かれた状況に応じて使うべき能力の選び方にも、その使い方にも反映されていました。

ホワイトペーパー: ITSMとITAMを統合するメリットを示す5つの事例ホワイトペーパーITSMとITAMを統合するメリットを示す5つの事例

これと同様に、IT資産管理(ITAM)を専門とするスタッフにも、この分野でキャリアを成功させるために自分に必要不可欠だと考えている「特別な能力/スキル」があると言えるでしょう。

そしてITAMに関わっている方であれば、次の能力/スキルは必要不可欠です。

  1. 特に自社の「大手ベンダー5社」のライセンスに関する十分な知識
  2. 資産のライフサイクルについての理解
  3. 重要なITAMプロセスを定義し構築する能力
  4. ITAMテクノロジーのベンダーと連携/取引するスキル
  5. 仕事への意欲を保ちつつ、チームで協力でき、自分だけで仕事をこなすことができ、水面下で取り組みを進めることができる能力

ただし、ご承知の通り、これらの能力/スキルを身に付ければ終わりというわけではありません。ITAM領域で成功を推進し、さらなるキャリアアップを後押しするために必要な能力やスキルはITAMの枠を超えた他の分野にも存在するのです。

営業と法務関連の知識

ITAMのソフトウェアやクラウド関連の業務に携わっているなら、営業や法務関連の基本的な(最小限の)能力/スキルを身に付けることが必須となります。基本的な法律用語、割引率や値上げ率、それらが予算の制約にいかに関わって来るかを理解するため、営業について認識を持つ必要があります。

法律面では、何に注意すればいいのかを把握するために、EULA(エンドユーザーライセンス契約)などの法的文書の読み方がわかることが大前提となります。ライセンスの利用制限を把握するのはITAMのスタッフであるあなた自身です。そして、(一部のベンダーとの契約では確かにわかりづらいことがあるのは事実ですが)ライセンスの利用制限についてはEULAやライセンス契約で定義されます。

契約内容の修正を依頼する方法や、ある条項が別の条項よりも優先されるケース(例:「3.2条が存在する場合、プロバージョンのすべてのモジュールを削除する必要があると規定する第2.11条が無効となる」など)を理解できるようになる必要があります。

特定レベルの契約(5万ドル以下の取引など)の交渉のみ管理する権限が与えられている場合もあれば、部門内で誰よりも権限が与えられており、数百万ドル規模の取引も含め、ITAM関連の契約すべてについて自ら交渉しなくてはならない場合もあります。交渉術や契約用語がわからなければ、あなた自身が勤務先の企業を大きなリスクにさらすことになり兼ねません。

変更管理&対人関係能力

これまでに一度もITAMを実施したことがない環境にメスを入れることは例外なく難解で厄介なものです。相手は現行の仕組みや仕事のやり方に慣れていて、現状に満足されている方たちです。組織風土の変更や社員の立場での見解を管理せずに、プロセスやポリシー、新しい働き方を導入すれば、最終的にあなたが悪者になるだけです。

ITAMがいかに各事業部門を改善できるのかを各事業部門の業務に関連付けることが鍵となります。まずは実務に関連する例を伝えてください(お子様のスイミング教室の送り迎え用に2ドアのフェラーリを購入する人はいません。同じように、ITAMに馴染みのない事業部門にとっては、目的を果たす上で何の役にも立たないのに、見た目だけ良く、高額なソフトウェアを購入すべき理由がわからないのです)。そして、専門的な用語を並べるのではなく気軽に話をすれば、徐々に相手をITAMの考え方に引き込むことができます。

ITAMの導入は、組織風土を大きく変え、気持ちの面にも大きな変化をもたらします。新しいプロセスは、ユーザーに抵抗感を抱かせる可能性があります。だからこそ、(組織風土の)変更管理の能力や社交スキルを磨くことが、ITAMについて他部門に理解してもらい、ITAM関連の取り組みを通して重要となる味方を作ることに役立つのです。

サービス提供&ベンダー管理能力

顧客として取引する何百社ものハードウェア、ソフトウェア、そしてクラウドのベンダーとの関係を管理する役割は大抵ITAMチームに任されます。

サービス提供とベンダー管理の能力/スキルを持っているからといって、それは必ずしも自社を担当している営業と良好な関係を築く方法や仲良くする方法を知っていることにはなりません。これらの能力/スキルには、すべてが正常に機能していることを確認するため定期的にサービスの見直しを目的とした会議を開くこと、期日までに問題を修正できなかった/問題に対処しないベンダーに対して異議を申し立てること、自分たちがベンダーの今後の事業計画において重要な顧客として位置付けられているか、また新技術を早い段階で導入してほしい企業として位置付けているかを確認することを確認することなどが含まれます。

また、ベンダーのSLAに加え、ベンダーが提供するサービス、提供しないサービス、追加サービスにかかる料金などに関する契約の条件を理解する能力(前提として法律関連の知識を持っていることが求められます)も含まれます。

さらにITAMベンダーを分類する能力が求められる場合もあります。通常ベンダーは以下の項目別に分類されます。

  1. 年間支出額
  2. リスクレベル
  3. 事業上の重要性

長年使われているお馴染みの「大手5社の」となるベンダーは、当然管理が必要なクリティカルかつ重要なベンダーに分類されますが、攻めの取引をするベンダーや監査の対象となる可能性の高いベンダーも優先的に管理するベンダー層に分類することが賢明な場合もあります。

また、多くの企業が、取引先のベンダーの「健康診断」を義務付けています。したがって、取引先候補のベンダーの財政的安定性に関するレポートといった形でデータ収集を支援することや、ベンダーとの取引が安全かどうかを見極めるため、法務部門や財務部門向けに決算書を入手することなどが求められる場合があります。

費用を投じて新しいSaaS(サービスとしてのソフトウェア)製品を社内に導入したものの、SaaSベンダーが倒産してしまったらどうなるか想像してみてください。

幅広い技術に関する知識

技術に関する幅広い能力/スキルを持つということは、ITAMツールに関する専門的な知識だけでなく、ITAMに関連するデータを提供できる他の技術についても理解することです。当然、ITAMチームはITAMツールの主要なユーザーであり所有者です。したがって、初期段階からこれらのツールを活用できるエキスパートであることが求められるだけでなく、バックグラウンドで実行される管理コンソールやデータベースの問題に対して最低限基本的な対策を取ることができるスキルを持っていることも求められます。

当然求められる能力/スキルとは別に、企業が利用しているITサービスマネジメント(ITSM)ツールの機能の仕組みを理解することもITAMチームにとっては重要となります。ITSMツールには一般的にCMDB(構成管理データベース)に加え、変更、重大なインシデント、ナレッジ、構成など主要なITILプロセスが含まれています。

これらのツールから必要なデータセットを理解し、ITAMにもメリットがあるようようにこれらのツールから得られる情報を効率的に利用する方法を理解する必要があります。

時間を費やして学習すべきその他の技術には、情報セキュリティ/サイバーセキュリティ関連のソリューション、人事部門が利用している技術、CRM(顧客関係管理)関連のツールなどからITAM関連のデータを抽出することができる技術が含まれます。

情報セキュリティ関連の技術はここ数年の間に飛躍的に発展しており、今では手に余るほど貴重な情報を提供できる技術となっています。さらに、資産にインストールされているソフトウェアファイルや資産の場所に関する情報に加え、更新されていないパッチやレガシーソフトウェアなど所有資産内に存在する可能性のある脆弱性などを把握するため、さらに情報を深く掘り下げることもできます。

レガシーソフトウェアは、企業と企業の機密データへの侵入を狙っているサイバー犯罪者にとって、鍵のかかっていないドアとなり得ます。

また、ライセンスや契約の観点から、サポート対象のソフトウェアと企業によるそれらの利用状況を把握する必要があります。ソフトウェアの使い方に関してはエキスパートである必要はありませんが、お客様にとって欠かせない主要機能に関しては把握しておく必要があります。

代わりに検討できるより手頃な価格のソフトウェアや無料のソフトウェアについてアドバイスを提供できるとなお良いでしょう。ハードウェアの観点から見た場合、自社が提供しているノートパソコンの基本的な仕様、提供しているタブレットやスマートフォンの機種、適用される例外(例えばCADユーザーに対して)について把握していれば、お客様や利害関係者との商談や話し合いの場に自信をもって臨むことができるでしょう。

この知識は、自社について、自社環境について、そして何よりお客様の要件について十分に理解していることを示す証拠となります。

求められる能力が多すぎると感じていませんか?

すべてを書き出すとたくさんあるように思えますが、これらはどれもITAMを専門とするスタッフやITAMチームのスタッフが日々の業務を通して自然に身に付けることができる能力/スキルおよび知識です。当然皆様はすでに、前述の他部門と連携して業務にあたり、先に触れた技術から(最低限)エクスポートしたデータをリクエストされていることと思います。

前述の能力/スキルを身に付けるために取り組んでいない場合、企業内でITAMを構築し、ITAMスタッフとしての立場を固める機会を逃しています。

今後新たな技術が出現し、形や規模を問わずあらゆるソフトウェアへの出費を管理し、最適化するためITAMに新たな信頼が求められることが想定されるため、2020年をITAMの専門スタッフとして迎えることは、非常にやりがいのある仕事を担う立場として未来への第一歩を踏み出すことになります。

慣れ親しんだ分野の枠を超えて新たな能力/スキルを身に付けるために時間を投資してください。そして、ITAMが社内で最も優れた業績を達成し、企業の成功に欠かせない領域へと成長する様子を見届けましょう。

本ブログの著者デイヴィッド・フォクセン(David Foxen)に関する詳細は、著者本人のTwitter(@SAMBeastDavid)をご確認ください。